第50章 それが彼女の好むものだと、本当に確信しているのか?

「……私、妊娠してから神経質になってるのかな……」

オフィスには自分ひとりしかいない。どこから視線が来るというのか。長谷川栞は可笑しくて、小さく首を振った。

軽く腹を満たし、手元の作業へ戻ろうとした、そのタイミングで――菊地瑠奈からビデオ通話が入る。

ここ数日、連絡も取れていなかった相手だ。栞はすぐに通話をつないだ。

「うちの社長様は、何をそんなにお忙しいんですか?」

画面に映った菊地瑠奈は、洗練された装いでばっちり決めている。背後は工事中らしく、資材や段ボールが雑然と積まれていた。

「ただのバタバタ。自分でも何してるんだか」

親友の軽口に、張り詰めていた気持ちがふっと緩む。

...

ログインして続きを読む